今月1日に「フリーランス新法」が施行されました。認知はきっとこれからでしょうが、簡単に書いてみます。
この法律におけるフリーランスとは、役員や従業員がいない事業者のことです。個人事業主はもちろん、一人社長の法人も含まれます。ここでいう「従業員」に該当するのは、1週間の所定労働時間が20時間以上で31日以上の継続雇用の予定がある労働者です。
フリーランスに業務委託で仕事を依頼する事業者は、フリーランス新法で定められたルールを遵守する必要があります。この業務を委託する事業者とは、役員または従業員を用いているという条件を満たす事業者です。つまり、事業を行わない一般人やフリーランス同士で取引する場合は本法律の規制を受けません。
この法律が制定された背景には、個人で活動するフリーランスと企業の取引において、フリーランス側が何らかの不利益を被るケースが多いことが判明したためです。パワハラ、セクハラなども含み、フリーランスの労働環境を向上させる目的で制定されました。
ちなみに、下請法と似ているところがありますが、下請法の規制対象となるのは、最低でも資本金等が1,000万円超の親事業者ですが、フリーランス新法では、委託事業者には資本金等の要件がありません。
では、どのような対応が必要なのでしょうか。以下、簡単に列記します。・取引条件の明示義務・期日における報酬支払義務・フリーランス側に問題がないにもかかわらずの物品や青果物などの受領拒否の禁止・報酬の減額禁止・フリーランス側に問題ないにもかかわらずの物品や成果物の返品禁止・買いたたき禁止・物品やサービスの購入などの強制・協賛金の要請などフリーランスへの不当な要求の禁止・フリーランスに責任がないのに当初予定がないやり直しを求めるなどの禁止などなどの対応が制定されています。
また、育児介護等等と業務の両立に対する配慮義務とかハラスメント対策とか、結構細やかに制定されています。
以上はフリーランスに業務委託する企業側の対応について書きました。次はフリーランス側でどんなことができるようになったかを書きます。
すべての業種で労災保険に「特別加入」できるようになりました。労災保険とは言うまでもなく仕事や通勤などでのケガ、病気、障害、死亡の際に使える保険です。特別加入制度は今まで労働保険事務組合をとおして一部の職種で認められていましたが、その対象が拡大されたのです。ここでも特別加入の手続きは個人で行うわけではなく、業界ごとの「特別加入団体」を経由することになります。特別加入団体は、既に設立済みの団体も、今後増える団体もあります。現在の特別加入団体については、厚労省のサイトを参照してください。
特別加入制度は結構複雑ですので、疑問点は労働局や労働基準監督署でも教えてくれます。また、労働基準監督署では”偽装フリーランス”なるものの相談等も受け付けているようです。今までも派遣法との絡みで”偽装下請け”の問題等もありましたが、それのフリーランス版です。企業が労働者として雇用せずフリーランスとして業務委託するような場合です。この問題は今までも今現在もよく見かけます。労働者性を有しているにもかかわらず雇用しないケースですね。今までもそれなりに行政のチェックはありましたが、今後しっかり厳しくなるはずです。
働き方の多様化が進む昨今、いかに生活者を守るかは大事な問題です。いろいろ複雑で解りにくい制度ではありますが一読してみることをお勧めします。