1.「雇用保険マルチジョブホルダー制度」2022.1.1スタート
複数の事業所で勤務する65歳以上の労働者が、そのうち2つの事業所での勤務を合計して以下の適用対象者の要件を満たす場合に、本人からハローワークに申出を行うことで、申出を行った日から特例的に雇用保険の被保険者(マルチ高年齢被保険者)となることができます。
①複数の事業所に雇用される65歳以上の労働者であること。②2つの事業所(1つの事業所における1週間の所定労働時間が5時間以上20時間未満)の労働時間を合計して1週間の所定労働時間が20時間以上であること。③2つの事業所のそれぞれの雇用見込みが31日以上であること。 上記3つの要件をすべて満たすことが必要です。
これらの要件を満たすマルチ高年齢被保険者が失業した場合(離職の日1年間に被保険者期間が6か月以上あること等の一定の要件があります)には、高年齢求職者給付金(一時金)を受給できるようになります。
マルチ高年齢被保険者が雇用保険の適用を受けるためには、事業主の協力が必要不可欠です。労働者から手続きに必要な証明を求められた場合は、速やかな対応が求められます。
2.改正育児介護休業法・・・主に男性の育休を取りやすくするための対策強化
①事業主に対してこれまで努力義務とされてきた労働者への個別周知が、制度の取得意向を確認するために必要な措置を事業主に義務づける。2022.4.1施行
②「出生時育児休業」創設 2022.10月施行予定 ”男性版産休”とも言われ、男性は子の誕生から8週間以内に最大4週間、分割して休める。休業期間中の労働者の収入に関しては、通常の育休と同様に雇用保険の育児休業給付金の給付対象とするほか、社会保険料免除の対象とする。
③現行の、有期契約労働者の”引き続き雇用された期間が1年以上”とする要件を撤廃し、雇用形態にかかわらず育休を取得できるようにする(労使協定締結等の要件あり)。
※制度が複雑になることによる事務負担が懸念されます(私見)。
3.社会保険の適用拡大 2022.10月施行
従業員数101人~500人の企業で次の要件に該当する方が対象です。①週の所定労働時間が20時間以上 ②月額賃金が8万8千円以上 ③2カ月を超える雇用の見込みがある ④学生ではない
※従業員数とは・・・フルタイムの従業員数 + 週労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数
※企業の単位・・・法人番号が同一の全企業合計
※現行は、従業員数501人以上の企業が上記の要件での強制適用になっています。それを今回から拡げるということで、ちなみに2024年10月からは従業員数51人以上の企業も適用になります。
以上、ピックアップです。この他にも来年以降は各種制度変更が見込まれますが、ピックアップしたこれらは、いずれも深刻な少子高齢化による諸問題に対応する改定です。
高齢者には短時間でもなるべく永く働いてもらい、また、男性が育児に参加することにより少子化を食い止め、社会保険を支える母数を大きくし、乗り切ろうとする制度転換ですね。
社会保障、特に年金問題は本当に深刻ですね。現行の賦課方式(若い人が高齢者を支える制度)は既に破綻していると言ってもいいでしょう。老後(老後という言葉の定義もよく判らなくなっていますが)、年金だけで生きていくのは今でも大変で、ましてや、この先の人たちはほぼ不可能かもしれません。
しかし、先日の自民党総裁選挙でも、この問題に深く切り込もうとすると、その原資にについてメタメタやられてしまった候補者がいたのが記憶に残りました。
どうやら、抜本的な制度改革はせずに少しずつの対策で軟着陸するのが賢明ということでしょうか?
果たして着陸できるのでしょうか? 無事の着陸を祈ります・・・。